2010年11月4日(木) 環境・建設委員会  建設局への事務事業質疑
山下委員 それでは、はじめに、都民の安全で安心な暮らしを支えるための防災対策について伺います。
近年、都内では局地的な豪雨が多発しており、多くの都民が浸水の被害にあっています。河川の整備などの対策が進んでいるのはわかりますが、浸水被害を軽減するためには、ハード対策に加え、ソフト対策も重要であると考えます。
都は平成21年3月から神田川で、また今年3月からは芝川・新芝川で洪水予報を始めたということですね。この洪水予報とは、どういうものか、そのしくみについて伺います。

横溝良一・河川部長 溢水による被害を軽減するためには、河川の整備はもとより、都民みずからが安全に避難できるよう、洪水の発生を事前に予測し、防災情報を迅速かつ確実に提供することが重要でございます。洪水予報は、気象庁の予測する降雨量などに基づきまして、たとえば、神田川では、一時間先の河川水位の上昇を都が予測し、溢水のおそれのあるときに気象庁と共同で発表するものでございます。

山下委員 洪水予報について、よくわかりました。
洪水予報は、区市町村が水防活動を行う際に役立つ防災情報と言えるでしょう。また同時に、都民が地下室から避難したり、土のうを積むなどして家への浸水を防ぐなど、自分の身は自分で守る、いわゆる「自助」を行うためには、この情報が都民に確実に伝わらなければ意味がない、とも言えるでしょう。
都民への情報提供は、どのように行うことになっているのか、そして併せて、これまでの洪水予報発表の実績についても伺います。

横溝部長 都民への周知につきましては、直ちに放送各社に情報を提供し、テレビテロップなどで広くお知らせいたします。同時に、区市は、防災行政無線、広報車、登録した住民へのメール配信などの方法で情報提供をおこないます。
なお、都では、神田川等で洪水予報の運用を開始してございますけれども、現時点におきましては、そこまでの水位上昇に至る降雨は発生しておりません。

山下委員 [まとめ]洪水予報は豪雨の際、非常に有効な防災情報であり、気象庁と協力して、さらに精度を高め、ほかの河川でも実践できるよう、検討していただきたいものと思います。
そして区市町村との連携も一層、深め、ハザードマップの公表を促進するなどして、都民の災害に対する不安を軽減していただくよう要望いたします。

次は地震対策として、橋梁の耐震補強について伺います。
今年1月13日には、中米・ハイチでマグニチュード7.0の大地震が発生し、死者およそ5万人という大惨事になりました。
また、先日、10月25日には、インドネシアのスマトラ島沖でマグニチュード7.7の大地震が発生し、死者・行方不明者は600人を超えています。
日本においても、阪神淡路大震災や中越地震など、甚大な被害をもたらした地震が発生しています。関東大震災から、既に80年以上が経過し、東京でも、いつ大きな地震が発生してもおかしくない状況と言われています。
一般の都民の方の「自分の近所の橋は地震のとき、大丈夫なのか。落ちたりしないのか。」といった橋梁被害を心配する声が、私のもとに届くこともございます。
都は、このような住民の心配を払拭すべく、いつ発生するかわからない地震への備えに万全を期す必要があると考えます。
都は、橋梁の耐震補強を現在、どのように進めているのか、伺います。

鈴木昭利・道路保全担当部長 震災時における都民の安全な避難や緊急輸送を確保し、防災機関の初動対応を迅速におこなうためには、橋梁の耐震性向上が重要であります。
平成七年に発生した阪神・淡路大震災は、それまで想定していた関東大震災を超える地震動だったことから、橋梁等に甚大な被害が発生し、防災機関の初動対応や住民の避難に影響を与えました。
都では、阪神淡路大震災クラスの地震に対しても安全性が確保できるよう耐震対策を実施してきており、現在、「十年後の東京」計画に基づき、震災対策上、重要な位置づけにある橋梁から計画的に、橋脚補強、落橋防止等の耐震補強を実施しております。

山下委員 平成7年の阪神淡路大震災以降、震災対策上、重要な位置付けにある橋梁から順次、耐震補強を実施している、ということがわかりました。
では、これまでの補強の進捗状況と今後の予定について伺います。

鈴木部長 都では、震災時の交通混乱を最小限にとどめ、被災者の安全な避難と応急対策に必要な緊急車両通行のため、最優先で通行を確保する一次緊急交通路から対策を進めてまいりました。
一次緊急交通路の橋梁、百六十五橋については、平成十五年度までにすべて完了し、現在は、被災地域や被災状況等に応じて交通規制を実施する一次緊急交通路の橋梁、百十七橋について対策を進めており、今年度末には百橋が完了する予定でございます。
今後とも都民の安全・安心を確保するため、引き続き、橋梁の耐震対策を着実に推進してまいります。

山下委員 [まとめ]いざ地震、というとき、都民の生命、財産を守っていく上で、道路が担う役割は非常に大きく、とりわけ橋梁は、都民の安全な避難や緊急物資の輸送などのために、その機能の確保は不可欠と言えます。できるだけ早く補強完了となることを望んで、次の質問に移ります。

かわっては、都立公園の施設について伺います。
ジャイアントパンダの話題などで、何かと動きがあり、注目される動物園とは対照的に、植物園は静か、つまり静の魅力をたたえた都市空間と言えるのではないでしょうか。調布市にある神代植物公園は年間の入園者が70万人を超えており、まさに静かな人気を誇る公園施設。私自身、幼い頃、オープンしてまだ日の浅い神代植物公園を訪れ、真新しい植物のネームプレートを見て、木や花の名前を覚えようとしたことを思い出します。
この神代植物公園も、昭和36年の開園から半世紀がたとうとしています。その間、バラ園の整備や大温室、水生植物園などの施工が進められ、ますます見応えのある公園になっていると感じます。私は、東京都のこうしたすぐれた植物園の存在をさらに広くアピールしたいと考えております。そこでまず、東京都は植物園の役割をどのようにとらえ、そしてどのような方針のもとで、運営しているのかを伺います。

上杉俊和・公園緑地部長 神代植物公園は、植物園として、調査研究、種の保存、レクリエーション、教育普及の四つの役割がございます。神代植物公園は、植物を展示するのみではなく、景観も楽しめる植物園として、都民に憩いの場を提供してまいりました。

山下委員 植物園が果たす役割、4つの機能などについてまとめていただきましたが、私には一つ心配なことがございます。建設局公園緑地部の事業概要の中には「経営者の視点、利用者の視点」に立った公園サービスという方針が記されています。こうした経営方針を否定するわけではありませんが、ともすると利益追求や大衆迎合に陥りやすい文言であるとも考えられます。
東京都という公共の施設だからできること、民間の施設とは違い、利益や人気優先ではない、広い視野に立った運営をすることが重要と考えます。
そういう意味では、さきほどのご答弁の中にあった「調査・研究」や「種の保存」などの活動には、今後もなお一層、力を注いでいただきたいものと思います。
では、具体的に神代植物公園での「調査・研究」や「種の保存」についての現状やこれまでの成果などをご紹介ください。

上杉部長 神代植物公園における調査研究や種の保存については、植物の保護、増殖を中心におこなっております。その成果としまして、神代植物公園の特徴でもある多種多様な品種を有するバラと江戸園芸植物のコレクションがございます。
バラ園では、七十九種類の原種のバラを栽培するなど、バラの品種の多さと栽培技術が評価され、昨年、世界バラ会議の優秀庭園賞を受賞いたしました。
江戸園芸植物に関しましては、ツツジやツバキ、梅などの江戸時代に品種改良された貴重な園芸品種を栽培しております。


山下委員 世界バラ会議で優秀庭園賞を受賞するなど、神代植物公園が世界に誇れる東京都の施設であることがよくわかりました。
このように貴重な植物園だからこそ、現在保有する植物たちをどう、後世に残していくか、命をつないでいくか、これが神代植物公園に課せられた大きな使命であると考えます。
特徴ある植物の栽培、種の保存のための取り組みを伺います。

上杉部長 貴重な植物を栽培し、保存していくためには、挿し木や接ぎ木などの特別な栽培技術を継続的に伝えていく人材育成などが重要でございます。植物の栽培技術を伝え、バラの原種や江戸園芸植物の貴重な品種を保存していくことも、都民に植物を楽しんでいただくことも、並んで重要な植物園の役割と考えております。

山下委員 [まとめ]神代植物公園では、現在、植物多様性センターの整備が進められている、と聞いております。植物の世界では近年、遺伝子の解明が進み、たとえば、これまでユリ科とされていたギボウシがリュウゼツランの仲間であることが判明するなど、分類の大幅な見直し、科の再編が行われています。植物という学問のジャンル、そして地球の未来、人間と植物の共存共栄のために、新たに整備される植物多様性センターは大きな役割を果たすものと思われます。その機能に期待をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。