2010年3月16日(火)環境・建設委員会 [環境局の予算等、事業に関する質疑全文]

*小笠原諸島の世界自然遺産への登録推進〜小笠原をガラパゴスのようにしてはならない!

山下ようこ それでは私からは、はじめに小笠原諸島の世界自然遺産登録に関して質問させていただきます。 
今年1月26日、小笠原諸島の世界自然遺産登録の推薦書が、ユネスコ、国連教育科学文化機関に提出されました。今後は、今年の夏、ユネスコの諮問機関である国際自然保護連合による現地調査などを経て、来年夏には、登録の可否が決まる予定と聞いております。 
小笠原諸島は、東京の南、およそ1000キロの太平洋上、大小30余りの島々からなり、これまで大陸と地続きになったことがない海洋島であることから、固有の動植物が生息・生育して、独自の生態系を創り上げていることは、ここにいる皆様、ご存知の通りです。
東京と言えば、世界的な大都市ですが、その一方で、小笠原諸島のように、世界でも類を見ない自然があることは、東京都民として誇らしいことと思います。世界遺産登録をきっかけとして、小笠原諸島の知名度が上がることは、喜ばしいことと思いますが、観光客が増加して、自然環境に悪影響を及ぼすことも想定されます。こうした影響を予測して、今から対策を講じておくことが必要と考えます。
 そこでまず、ガラパゴス諸島など、すでに登録されている世界自然遺産について、登録後に生じた自然へのマイナスの影響を伺います。

大村雅一・自然環境部長 昭和53年、1978年でございますが、世界で最初に世界自然遺産に登録されましたガラパゴス諸島につきましては、ユネスコが平成時19年に世界危機遺産リストに登録をおこないました。ユネスコによりますと、その理由は、観光客の増加と、それに伴う移住者の増加に伴いまして、ガラパゴス独自の生態系が脅威にさらされているから、ということでございます。

山下 ガラパゴス諸島では、観光客の増加による生態系の変化によって、生物多様性などの遺産価値が危険な状態にさらされていることを示す「世界危機遺産リスト」に登録された、とのことですから、「東洋のガラパゴス」と呼ばれる小笠原諸島でも、同じようなことが起こりかねません。 たとえば、観光客の増加によって、歩道ぎわの踏み固めやゴミ捨てなどの不適切な行為が増えることも懸念されます。
 また、世界自然遺産に登録されることによって、オガサワラシジミやアサヒエビネなどの固有種が広く知れ渡り、密猟や盗掘などが増えたりしないか、気掛かりです。
 小笠原諸島では、何としても、このようなことが起こらないようにしていただきたいものです。
 そこで、小笠原諸島では、観光客の増加が自然環境に悪影響を及ぼさないようにするために、登録を見据えて、どのような対策を講じているのか、また今後、講じていくのか、伺います。

大村部長 世界遺産の推薦にあたりましては、ほかの事例を参考に対策を検討いたしまして、国立公園における特別保護地区の拡張など、保全策を強化いたしますとともに、小笠原全体の自然環境を保全するための管理計画を策定いたしました。
 観光客の増加に対しましては、観光と自然環境の保全の両立を図るために、利用人数や利用ルートを定めました東京都版エコツーリズムの推進や自然観察ルートの徹底などに取り組んでおります。
 また、動植物の密猟対策といたしまして、希少動植物の捕獲や採取の禁止などの観光客への注意喚起と、都レンジャーによります巡回や指導を実施しております。
 世界遺産に登録されましたあとも、引き続き関係機関と連携しまして、自然環境の保全に取り組んでまいります。

山下 他の事例を踏まえて、対策を講じていることは理解いたしました。
 小笠原諸島の自然を将来に渡って保全していくためには、ただ今、答弁いただいたような対策を着実に進めることが重要と考えます。
 平成22年度予算案を見ますと、世界遺産登録推進事業として、およそ2億5000万円が計上されています。具体的には、どのような事業をおこなうのか、伺います。

大村部長 平成22年度の事業でございますが、植生回復事業、外来種対策、自然環境の変化を把握するモニタリング調査、普及啓発用の案内板の設置などを実施する予定でございます。

山下 引き続き、しっかりと対策に取り組んでいただくことを要望するとともに、小笠原諸島が来年の夏、世界自然遺産に登録されることを期待して、次の質問に移ります。

*都市型キャップ&トレード〜世界初の制度に期待する!

山下 続いてはキャップ&トレード制度について伺います。 東京都では、いよいよ4月1日、温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度、いわゆるキャップ&トレード制度がスタートしますね。
 全国に先駆けた罰則を伴う制度であり、産業界に対しては、これまでのように自主的な削減対策から「総量削減」という新たな政策への発想の転換を促す契機になるものとして、その先見性を高く評価させていただきます。
 一方、世界に目を転じますと、2005年に先陣を切ってEU諸国で導入されたEU−ETSや、去年、アメリカ北東部10州に導入されたRGGI、いわゆるレッジが実際に運用されているほか、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などでも、導入に向けた検討が始まっていると聞いております。
 今回、東京都が国の制度導入に先駆けて始めるキャップ&トレードは、諸外国の先行事例と比較して、どのような特長を持つのか、また国内外におけるキャップ&トレードの導入に向けた検討の中で、都の制度導入は、どのような意義があるのか、まず伺います。

大野輝之・理事 都制度は、オフィスビルなどの業務系施設をも対象とするものでございまして、この点では世界で初めての都市型のキャップ&トレードであるという特長を持っております。
 先般、今国会に提出される予定の温暖化対策基本法案が閣議決定されましたが、排出量取引の導入については規定がございますが、肝心の総量削減義務を導入するかについては、極めてあいまいなままになっていると思っております。
 都は、都内の事業者の皆さんと連携いたしまして、都のキャップ&トレード制度が効果を示すことを通しまして、国における実効性のある制度の実現を促進していきたいと考えております。

山下 日本国内だけでなく、世界的に見ても、東京がキャップ&トレード制度を導入する意義が非常に大きい、ということが、よくわかりました。
 次に、都のキャップ&トレードにおける対象事業所について伺います。
 都の制度で義務の対象となるのは、前年度のエネルギー使用量が、原油換算で1500キロリットル以上の大規模事業所であり、オフィスビル、工場など、個々の事業所単位ごとに、Co2 排出量を把握し、毎年、報告を求める仕組みとなっています。
 一方、国の試行排出量取引スキームは、事業所単位だけでなく、企業や業界団体を単位とする参加が認められており、参加者が選択できる仕組みとなっています。
 都のキャップ&トレード制度が事業所単位を採用するメリットは何かを伺います。

大野理事 実効性のある制度を実現する上で最も大切なことの一つは、Co2 の排出量と削減量を正確に把握することでございます。省エネ法でございますとか、改正された地球温暖化対策推進法など、あるいは、その試行スキームなどでは、企業単位の集計方法を認めているわけですが、こうしますと、小規模な多数の事業所の排出量もカウントしなければ企業全体の排出量が出ない、ということになります。
 このため、都の制度では、排出量のモニタリング、報告、検証を最も確実におこなうことができる大規模な事業所単位、というふうにしております。
 また、事業所単位の把握方法は、個々の事業所ごとの排出削減に向けた取り組み状況が明らかになる、という点でもすぐれていると考えております。

山下 事業所単位で取り組み状況を把握するメリットがよくわかりました。
 続いては、排出量取引について伺います。
 今回の制度は、5年間の計画期間の中で、中期的な視点を持って、まずは自らの削減対策をおこない、総量削減義務を達成できない場合には、義務の履行手段として、排出量取引制度を活用できる仕組みとなっています。
 しかし、都内のCo2 排出量を大幅に削減するためには、過度に排出量取引に依存するのではなく、できる限り、自らの省エネ対策で義務を履行するよう誘導する必要があると考えます。そこで、排出量取引を導入する意義を改めて伺います。

大野理事 排出量取引制度を導入するに関しましては、条例改正時の当委員会のご審議でも答弁させていただいておりますけれども、改めてお答えをさせていただきます。
 排出量の削減対策としての設備改修は、事業所にとりまして光熱費の削減というメリットを得るものでございますが、大規模な設備改修は、それだけ初期投資が高くなるために、回収にかかる期間が長期化する、という傾向がございます。
 排出量取引を導入しますと、大規模な設備改修によってCo2 の総量削減が実現した場合、その削減分を排出量取引で売却することが可能になります。これによって、初期投資の回収を早めることが可能になるということでございます。つまり、排出量取引は、これまでおこなわれづらかった大規模な省エネ改修を促進する効果があると考えております。
 このように排出量取引制度の導入は、事業所に、削減対策に率先して積極的に取り組むインセンティブを与えるものでございます。また、削減義務の履行の方法につきまして、事業所に選択の余地を増やし、柔軟な対応を可能にするという意味も有するものと考えております。

山下 以上、都のキャップ&トレードの特長と、その導入意義について、改めて確認させていただきました。
 排出量取引については、隣りの埼玉県でも、導入に向けた検討が進んでいると聞いております。ぜひ、今後は他の自治体との連携も図っていただきたいと思います。
 東京都が、世界初の都市型キャップ&トレードとして、確実に削減実績を上げ、成功事例として、国内はもとより世界の大都市にも積極的に貢献していきますことを心より期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。