2011年10月28日(金) 平成22年度公営企業会計決算特別委員会 第二分科会
都市整備局に対する質疑

山下ようこ それでは私からは、東京都が進めている3つの市街地再開発事業、具体的には北新宿地区、環状第二号線新橋・虎ノ門地区、それに大橋地区について伺います。
今年3月11日の東日本大震災の甚大な被害は、日本人に防災対策のさらなる強化の必要性を訴えるものとなりました。
東京都の市街地再開発事業のうち、特に防災の面から注目すべき、と考えられるのは北新宿地区です。かつては木造住宅が密集し、火災に脆弱な地域だったと認識しております。地震に伴い、大規模な火災が一気に発生した場合を危惧する声も多く聞かれました。
しかし、現在では、再開発事業が進み、新しい街に生まれ変わりつつあります。
そこで、まず、この北新宿地区の平成22年度決算における事業費ベースの進捗率と、防災面での取り組みについて伺います。

遠藤正宏 都市整備局市街地整備部長 北新宿地区市街地再開発事業の平成22年度決算におきます事業費ベースの進捗率は96%でございます。
 この北新宿地区の事業は、都市計画道路放射第六号線と青梅街道の交差部に位置する約4.7ヘクタールの区域でおこなっております都市計画事業でございます。平成10年度から事業に着手してございます。
 北新宿地区は、新宿副都心の一角に位置しながら、お話がございましたように狭わいな道路が多く、また細分化された宅地に木造住宅が密集するなど、防災上、危険な地域でございました。
 この事業では、防災面の取り組みといたしまして、放射第六号線を整備して延焼遮断帯を形成するとともに、生活道路を整備して緊急車両のアクセスの向上を図っております。また、再開発ビルを建設しまして、従前8割を占めていた木造住宅をすべて建物不燃化を図ることとしております。
 これらに加えまして、約5,000平方メートルの空地には、災害時にトイレとして利用できるマンホールや、かまどとして使えるベンチを整備しておりまして、周辺からも逃げ込むことのできる震災に強いまちづくりを進めているところでございます。

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山下 続いて「人と車との共存」という観点から、環二地区と大橋地区について伺います。
環二地区では環二本線、大橋地区では大橋ジャンクションという、幹線道路の整備と街づくりを一体的に実施している事業と承知しております。このうち大橋ジャンクションは既に昨年3月、供用を開始しましたので、きょうは22年度決算ということで、環二地区の平成22年度決算における事業費ベースの進捗率と道路整備の進捗状況について伺います。

遠藤部長 環状第二号線新橋・虎ノ門地区市街地再開発事業の平成22年度決算におきます事業費ベースの進捗率は73%でございます。
 この再開発事業により整備します新橋・虎ノ門地区の環状二号線は、広域交通を担う地下トンネルの本線と地域内交通を担う地上部道路の二層構造となってございます。このうち虎ノ門地区につきましては、立体道路制度を活用しまして、地下の道路と再開発ビルが一体となった構造で計画してございます。
お尋ねの道路整備の進捗状況でございますけれども、地下トンネルの本線につきましては、建設局施行の街路事業でございまして、平成19年度から工事に着手してございます。
なお、再開発ビルと一体的に施工する虎ノ門地区の分につきましては、今年の4月に着手してございます。
他方、地上部道路につきましては、再開発事業として都市整備局が整備をおこなうものでございまして、今年度から順次、工事に着手してまいります。

山下 東京都が進めているこの3地区の再開発事業のすぐれている点は、もともとの住民が、その地域にそのまま住み続けられるということだと思います。
また、もともとの住民だけでなく、マンションなどには新たな人々も入居し、活気ある新しい街の誕生にもつながります。
そこで、東京都では、「人々の暮らし」という観点から、従来の住民や新たにその地区に入居される人々に対して、どのように配慮しながら、街づくりを進めているのか、伺います。

遠藤部長 再開発事業におきまして、地区内で生活再建を希望される権利者の方には、地区内に建設いたします再開発ビルに権利が返還されることになります。このことによりまして、従前の権利を持たれている方は再開発ビルに入居するということが可能となるわけでございます。
 また、地区外に転出を希望される方に対しましては、施行者であります東京都が代替地とか、あるいは移転先の物件のあっせんなどをおこなっておりまして、個々の方々の事情に応じましてきめ細かく対応し、地区外での生活再建が図れるよう努めてきたところでございます。
 とりわけ都施行の再開発事業は、再開発事業によりまして道路整備するということが重要でございます。道路整備によりまして、広域交通ネットワークの形成、あるいは地域の利便性の向上が図られるということになるわけでございます。また、再開発ビルの建設や公園や緑地の整備によりまして、住環境の改善、あるいは防災性の向上が図られることになるわけでございます。
 このように再開発事業は、ただいまお話がございましたような人々の暮らしへの配慮、これに十分に配慮したまちづくりを進めてきたところでございます。

山下 よくわかりました。
人にも環境にも配慮した街づくりを進める上では、植物を植える、すなわち緑化も非常に重要な要素です。新宿駅の西口地下広場には、「大橋グリーンジャンクション進行中」という大きな広告ビジョンが掲示されていて、人目を引きます。
そこで、3つの地区の再開発事業での緑の整備内容と今後の予定を伺います。

遠藤部長 都施行の再開発事業では、計画段階から環境に優しいまちづくりに向けまして、さまざまな創意工夫を行いまして、緑地の確保に努めてまいりました。
 北新宿地区につきましては、街区全体で約8,400平方メートルの緑地を確保する計画でございまして、これは地区全体の敷地面積の約3割を占めてございます。
 次に、大橋地区でございますけれども、この地区では地元目黒区が首都高速大橋ジャンクションの屋上を利用した公園整備を実施しておりまして、平成24年度に完成する予定でございます。また、首都高速道路の換気所の屋上には、田植えもできる自然再生型の緑地空間が首都高速道路会社によりまして整備されてございます。これらを合わせまして、大橋地区全体で約13,600平方メートルの緑地が確保されることになってございます。
 さらに、環状第二号線新橋・虎ノ門地区でございますけれども、この地区では3つの街区に合わせて6,500平方メートルの緑地を確保する計画でございます。加えまして、環状第二号線の地上部道路につきましては、広い歩道空間を活用いたしまして、街路樹などによりまして、グリーンロードネットワークにふさわしい、厚みのある緑を整備することとしてございます。こちらのほうの全体の完成は平成26年度までを予定してございます。


山下 3地区ともダイナミックな緑化推進の状況がよくわかります。
かつては、開発イコール緑の減少と思われましたが、時代は移り、緑を守る開発に。さらに21世紀の現在は、もはや開発は緑を増やすものであると私は考えます。
都民の中には、いまだに「開発は緑を減少させる」と思っている人もいるようですが、「理念のある高尚な開発は、緑化をダイナミックに躍進させるものである」と、私は声を大にして言いたい、と思っております。
そして、そのような観点から、東京都の再開発事業は、21世紀型の街づくりの模範であると考えます。これからも首都東京、そして世界の大都市・東京にふさわしい都市整備を遂行することを要望して、質問を終わらせていただきます。


2011年10月28日(金) 平成22年度公営企業会計決算特別委員会 第二分科会
病院経営本部に対する質疑

山下ようこ それでは、私からはまず、都立病院改革について伺います。
先日の川澄・病院経営本部長からの決算概要説明で、「365日24時間の安心」と「患者中心の医療」の実現を目指して、都立病院の改革に取り組んでいる、というお話がありました。
病院のアメニティ向上や医師・看護師の増員など、患者中心の医療を実現していくためには、大きな費用がかかると思われます。一方、高齢化の進行などに伴い、医療費は増加の一途をたどり、各病院では経営改善が大きな課題になっている、という現状があります。
患者中心の医療を実現していくとすると、病院の収支がさらに圧迫されるのではないか、と一般には考えられがちです。
そこで、都立病院では、「365日24時間の安心」「患者中心の医療」といった理想と、支出の抑制という現実的な問題をどのように両立させて、改革を進めているのか、伺います。

藤田裕司 病院経営本部経営企画部長 これまで都立病院では、患者中心の医療に向けまして、患者権利章典の制定、医療事故防止マニュアルの策定など、医療安全管理対策の充実強化、広尾、墨東、多摩などで東京ERの開設や、女性専門外来、あるいはセカンドオピニオン外来など、患者ニーズに応じた専門外来の実施、患者さんの支払い手段を多様化いたしますクレジットカードによる決済方法の導入、あるいは患者さんの身体的負担を軽減する、より低侵襲の治療法の導入などをおこなってまいりました。
 これらの実現に当たりましては、山下副委員長ご指摘の通り、一定経費がかかっているというところでございますけれども、これは一方で、患者サービスを充実することによりまして、患者数増など収益に寄与している面もございます。
 また、たとえば後発医薬品の採用拡大は、病院のコストを縮減いたしますとともに、患者負担もあわせて軽減することにつながっております。
 また、医師、看護師等の体制強化は、患者様への医療サービスを充実するとともに、診療報酬上の施設基準加算、こういったものの取得にもつながってございます。
 今後も、これまでと同様に患者中心の医療を実現しつつ、都立病院総体として経営改善に取り組みをおこないまして、効率的な病院運営に努めてまいります。

山下 患者中心の医療を実現させつつ、経営の健全化を進めていることがわかりました。これからも、このような方針で都立病院改革に取り組んでいただきたいものと思います。
ところで、患者中心の医療現場、つまり患者の視点に立った安全で安心できる質の高い医療サービスを提供するための取り組みの一つに、病院での緑化の推進も挙げられます。
患者さんにとって、病院での入院生活や外来での待ち時間などは、ストレスがたまりやすいものと思われます。
ストレスを測る指標として、唾液アミラーゼや脳波などがあることを病院経営本部の皆様なら、ご存じのことと思います。
私は先ごろ、人間のストレスと植物の関係について、複数の研究者に調査を委託し、結果を得たところでございます。たとえば、ストレス時に活性値が上昇する唾液アミラーゼに関しては、国立大学法人豊橋技術科学大学大学院の松本博教授に実験を委託し、緑化をしたオフィスでは、アミラーゼ活性値の上昇が抑えられるというデータを得ておりますし、脳波については、桐蔭横浜大学工学部の飯島健太郎准教授が、ブロック塀を眺めているときと生垣を眺めているときの脳波を比較すると、生垣の場合は、リラックスした状態を表すα波を多く発生している、という中村隆治、藤井英二郎という2人の他の研究者の成果を報告書の中にまとめています。
これらのことからも、病院の緑化、生命の息吹を感じる緑の存在は、患者さんのストレスを和らげる、つまり心を癒すための大切な要素であると考えます。
東京都内で複数の病院施設を運営する病院経営本部は「平成22年度当初予算の概要」における「省エネルギー対策等の推進」のための取り組みの中で、「緑の都市づくり推進のため、患者の療養環境にも配慮し、緑化を進める。」としています。
そこで、都立病院の緑化の方針について伺います。

別宮浩志 サービス推進部長 都立病院は、緑の東京10年プロジェクトの基本方針に基づきまして緑化を推進しております。
 緑には、温暖化抑制機能や、山下副委員長が先ほどご指摘の通り心を癒す機能がございまして、特に病院におきましては、患者さんに安らぎや潤いを与えるなど、その役割は多様かつ重要でございます。
 このため都立病院では、再編整備にあわせまして、屋上緑化や患者さんが自由に散策できる庭園の整備を推進するとともに、すき間空間を有効に活用し、可能な限り院内外の緑の創出に努めております。

山下 それでは、これまでの具体的な緑化の取り組みと成果について伺います。

別宮部長 具体的には、病院内におきましては、従来から病棟デイルームや外来待合、エレベーターホールなど随所に観葉植物を配置いたしまして、院内環境の整備に努めております。
 また、さらなる緑化推進の観点から、すき間に緑化プランターを配置するすき間空間への緑化にも取り組んでおります。
 屋外におきましては、平成13年度に広尾病院の産科病棟や小児科病棟のある4階病棟テラスの緑化をおこない、また、再編整備にあわせまして、平成22年3月には松沢病院医療観察病棟の屋上緑化を、また、多摩総合医療センター、小児総合医療センターの整備では、屋外庭園の整備をおこないました。
 さらに、今年度開設いたしました駒込病院の緩和ケア病棟につきましては、緑を配置した屋上庭園を配置するなど、病院ごとに医療機能や緑化の効果を考えた療養環境づくりを進めてまいりました。
 引き続き、患者さんにとってよりよい環境づくりを推進してまいります。

山下 よくわかりました。先ほどのご答弁にありましたように、東京都は、これまで、緑あふれる東京の実現を目指し、街路樹倍増計画や建物の屋上緑化などを進めており、都の施設においても、実態に即した緑化をおこなっていると認識しております。
都立病院での緑化の推進は、患者さんへのサービス向上につながるのはもちろんのこと、患者さんのために身を粉にして働く医師、看護師をはじめとする職員の皆さんの心身の健康維持にも役立つものと考えます。さきほどお話ししたストレスの軽減だけでなく、植物には空気の質の改善という化学的な働きもあります。人体に有害な揮発性有機化合物の吸収、分解、さらに消臭などによって、病院が働きやすい職場になり、それがまた、医療サービス向上につながるものと考えます。
このような観点からも、都立病院で、なお一層、緑化が進められますよう要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。