2011年10月26日(水) 平成22年度公営企業会計決算特別委員会 第二分科会 
下水道局に対する質疑

山下ようこ それでは、私からは下水道局の技術開発に照準を絞って質問をさせていただきます。
先日、平成22年度の決算についての説明を伺い、下水道局がすぐれた技術を数多く開発し、それらを実際に国内外の現場で活用していることがわかりました。
下水道事業は、水循環や資源のリサイクルという分野で重要な役割を果たすものであり、地球環境の保全がすべてに優先される、と言っても過言ではない現代において、東京都下水道局の開発した技術が地球環境に大きく貢献できるのであれば、これは都民の一人としても、誇らしいことと思います。
技術開発にあたっては、下水道局が独自におこなうものや、民間企業と連携する方法などがある、と伺っております。
民間企業との連携の場合は、そのルール作りも大切と考えます。民間企業と共同で技術開発をおこなう場合の制度はどのようになっているのでしょうか、お聞きいたします。

中里隆 下水道局技術開発担当部長 下水道局が民間企業と共同で技術開発をおこなう制度といたしましては、当局が課題を提示し、それに対して民間企業が応募した企画書を評価、選定して実施する公募型共同研究と、民間企業が実用化を視野に研究している技術について、当局が下水汚泥などの実験材料を提供し、民間企業は開発機器などを当局の実施設に持ち込むなどして実施するノウハウ・フィールド提供型がございます。
 また、今年度からは、これまでの共同研究手法に加え、民間企業がおこなう技術開発のインセンティブ向上のため、開発した技術を導入する工事の発注を前提とする共同研究を実施しております。
 このように、民間の最先端技術と当局の持つノウハウを組み合わせることにより、革新的な技術開発や効率的な技術開発を進めているところでございます。

山下 ご答弁を伺っておりますと、民間企業にとってメリットのある、やりがいのある共同研究と感じます。では、平成22年度は、具体的にどのような技術開発の成果を得ることができたのでしょうか、伺います。

中里部長 これまで下水道局では120件を超える共同研究を民間企業と実施してきており、老朽化した施設の再構築技術や地球温暖化対策技術、資源の有効利用技術など、さまざまな技術を開発し、その成果を取り入れることで、下水道事業が直面している課題の解決を図ってまいりました。
 平成22年度においては、水処理の過程から発生する二酸化炭素の310倍の温室効果を持つ一酸化二窒素の連続測定計の開発をはじめとした9つの新たな技術の開発と評価をおこないました。
 また、平成22年度には、我が国初となる技術として、汚泥から発電用の可燃ガスを取り出す汚泥ガス化炉を清瀬水再生センターで完成、稼働させたほか、太陽光発電設備や再生水造水設備を稼働させております。

山下 ただいまのご答弁の中に、清瀬水再生センターで汚泥ガス化炉が完成し、稼働を開始した、というお話がありました。この汚泥ガス化炉は、地球温暖化対策に大きく貢献する技術であり、日本初の取り組みとして注目を集めていると聞いております。そこで、この汚泥ガス化炉の仕組みと、その効果について改めて伺います。

堀内清司 技術部長 清瀬水再生センターの汚泥ガス化炉は、下水汚泥を低酸素状態で熱分解し、ガス化することで、温室効果ガスの排出を大幅に削減して、地球温暖化防止に貢献する日本初の施設でございます。
 特徴は、ガス化炉で発生するガスを汚泥の乾燥処理の熱源や発電等に有効利用するとともに、一酸化二窒素の発生を従来の汚泥焼却炉に比べて大幅に削減できることであります。この効果を、従来の焼却炉と比較すると、一年間に発生する温室効果ガスを二酸化炭素に換算して約9割にも相当する12,500トン削減することが可能となります。

山下 ありがとうございます。非常にすぐれた技術開発であることがよくわかりました。
また、決算の説明の際、開発した技術の中には特許などを取得しているものも多い、と伺いました。これまでに下水道局は特許などをいくつ取得しているのでしょうか、伺います。

須田潔 経理部長 当局では、出願中のものを含めまして、平成22年度末、221件の特許等を有しており、これは都庁の中でも抜きんでた実績となっております。

山下 わかりました。ただいま、ご答弁いただきました221件のうち、すでに特許を取得している合流式下水道の改善を図る水面制御装置は、日本国内のみならず、海外にも展開していると認識しております。東京生まれの技術、ノウハウが世界に発信され、地球環境の保全や地域環境の改善に貢献しているうれしい事例であると思います。
そこで、この水面制御装置の海外展開についての説明をお願いします。

熊谷透 企画担当部長 お話の水面制御装置は、下水道局、監理団体であります東京都下水道サービス株式会社及び民間企業の三者で共同開発した特許技術でございます。
 この装置は、雨天時に合流式下水道の雨水はけ口から河川などに流れ出す下水中のごみを7割以上除去できるのみならず、取り付けが容易、動力も不要、他の装置と比べて安価であるなどの特徴を持っており、既に23区内のほとんどの雨水はけ口に設置しております。
 この装置は、海外においても高い評価をいただいており、昨年はドイツ及び韓国の企業と、さらに、今年9月にはアメリカの企業との間で、それぞれ同装置の製造、設置、販売の権利を付与するライセンス契約を締結いたしました。本年4月には、ドイツにおいてヨーロッパ第一号機が設置されております。
 今後も水面制御装置に限らず、東京下水道の現場の創意工夫から生まれ、高度な技術によって確立した個別技術の海外展開を通して世界の水環境の改善に貢献してまいります。


山下 世界の水・衛生問題に直面している国や地域の発展に寄与している、つまり国際貢献である、ということがよくわかりました。
このようなすぐれた技術を生み出すのも、支えていくのも人であり、下水道事業に従事するすべての人々の能力をさらに向上させていく必要があると考えます。
少子化の日本、マンパワーの総量が減少していくと想定される中、一人ひとりが果たす役割はますます大きくなると考えられます。少数精鋭で事業を進めていくためにも、人材育成に一層、力を入れなければなりません。
下水道局の人材育成への取り組みを伺います。

小山哲司 職員部長 下水道局が日本の下水道技術を牽引するとともに、将来にわたって下水道事業を着実に推進し、お客様サービスを一層向上させていくためには、東京都の下水道事業を担う当局、東京都下水道サービス株式会社、TGSと呼んでおりますけれども、及び民間事業者の三者のそれぞれが計画的に人材を育成し、生かしていくということが必要でございます。
 このため、下水道局におきましては、人材育成の取り組みとして、職場内外において実習や事例研究を重視した実践的な研修をおこないますとともに、ベテラン職員が培ってまいりました技術や業務ノウハウの映像化、データベース化など、技術継承の取り組みも進めております。
 また、TGSは、下水道施設の維持管理業務の委託など、多岐にわたり、専門性の高い現場を当局と一体となって担っておりまして、委託業務の執行や進行管理といった日々の業務が実践的なOJTとなりまして、局とTGS相互のノウハウの蓄積や技術の継承につながっているところでございます。
 さらに、民間事業者を対象として、下水道の最新技術の普及を図る研修や工事現場等での安全管理の向上を目的とした実践的な研修なども実施しておりまして、人材育成を支援しているところでございます。
 今後とも下水道技術の発展や下水道サービスの向上を目指し、次世代の下水道事業を担う人材を育成するための取り組みを計画的、継続的に進めてまいります。

山下 よくわかりました。これまで培ってきた技術を継承し、さらに先進的な技術を開発する。環境の世紀・21世紀をリードする東京都下水道局でありますことを願って、質問を終わらせていただきます。