山下ようこ それでは、私からは、まず、東京の水道の水源地域に注目して、質問をさせていただきます。
先日、私は奥多摩町に行ってまいりました。山々の紅葉が美しく、東京の西の奥座敷と言うにふさわしい、趣のある季節の装いを見ることができました。
奥多摩町には、都民の貴重な水がめ、小河内ダムがあり、さらに、その周辺や、山梨県にまたがる多摩川上流域には、東京都水道局が管理する広大な水道水源林があります。
この水道水源林は、今からおよそ100年前、乱伐によって木々が失われた山林を当時の東京府が国から譲り受け、水道局が植林、間伐などをおこなうことによって、緑豊かな森林に生まれ変わったものであると聞いております。
昭和32年に完成した日本最大の水道専用ダム、小河内ダムが、ほぼ同じ時期に建設されたほかのダムと比較して、土砂の堆積も少なく、良好な状態に保たれているのは、この水道水源林の存在が大きく関係していると考えられます。
そこで、多摩川上流の小河内ダム、及び水道水源林が果たす役割について伺います。
酒井晃・浄水部長 健全な状態の森林は、主に3つの機能を持っております。1つ目は、水を土壌の中に十分蓄えることにより、洪水や渇水を防ぐ水源涵養機能。2つ目は、樹木の根が山の土をしっかりと押さえることにより、土壌の浸食や山崩れを防ぐ土砂流出防止機能。3つ目は、水が土の中を浸透する間に不純物を取り除く水質浄化機能でございます。水道局では、これらの3つの機能を十分に発揮させるため、水道水源林を良好に保護、育成することにより、流入河川の保全や小河内貯水池の堆砂の軽減等を図っております。
小河内貯水池は、東京の貴重な水源であり、将来にわたり安定給水を図る上で重要な役割を担っております。
.山下 水道水源林の役割について、まとめていただきました。水道水源林の意味、重要さがわかりました。
ただ、それだけに、近年の水源地域の民有林の荒廃は問題です。林業の不振などにより、手入れの行き届かない山が増加し、平成19年9月に発生した台風9号では、大量の土砂と流木が川や小河内ダムに流入し、水の濁りが翌年まで続くという事態が発生しました。
水道局は、これまでに多摩川水源森林隊を設立して、ボランティアと一体となった民有林保全活動をおこなっていると聞いておりますが、それだけでは追いつかないほど、民有林の荒廃が進んでいるのが現状です。
こうした状況を改善するために、水道局では、昨年度、民有林を試験的に購入する「民有林購入モデル事業」を開始したと承知しております。新聞報道などもおこなわれ、注目されている事業であると考えます。そこで、このモデル事業の進捗状況を伺います。
酒井部長 この事業は、小河内貯水池上流域の管理が不十分で、所有者が手放す意向のある荒廃した民有林を購入し、水道水源林として適正に管理することで、小河内貯水池の保全を図ることを目的としております。
昨年度は、山林所有者から申し込みを受け付け、要件に合致した案件について、専門家などによる委員会で審査をおこない、3件を購入対象山林として選定したところでございます。
当該案件につきましては、現在購入に向け、隣接土地所有者の特定や境界確認などの作業を進めておりますが、この一連の作業は、市街地での境界画定作業などに比べると面積が広大であり、地形が厳しいことなどから、購入に至るまでには時間がかかると考えております。
山下 相続など所有者の世代交代などもあり、境界線画定は根気のいる作業であると思いますが、ぜひ、モデル事業の名にふさわしい、全国のモデルとなるような成果を上げていただきたいと思います。
ところで、水道水源林は、都民の命をつなぐ水を守る、というだけでなく、二酸化炭素・CO2吸収機能を保有することから、広く地球環境への負荷低減にも貢献しています。
水道事業は、送配水の際に電力を使用するため、地球環境に負荷の与える事業であると言えます。実際、水道局の電力使用量は年間、およそ8億キロワットアワーで、これは都内の全電力使用量のおよそ1%に相当します。
東京都は、環境確保条例を改正し、平成22年度から都内の大規模事業所に対して、温室効果ガスの総量削減を義務化しており、より一層、環境負荷低減への社会の意識も高まってきていると言えます。そこで、水道局のこれまでの環境負荷低減のための取り組みと、その効果について伺います。
黒沼靖・企画担当部長 水道局では、環境負荷低減対策としまして、ポンプ設備等の省エネ化や総合的なエネルギー管理による水運用の実施といったエネルギーの効率的利用を図るとともに、太陽光発電設備や小水力発電設備の導入などによる再生可能エネルギーの有効活用などの対策を積極的に実施しております。
このような取り組みの効果としまして、平成22年度実績では、二酸化炭素の排出量を約3,500トン抑制しております。
山下 よくわかりました。では、今後、環境負荷の低減とCO2削減のために、どのように取り組んでいくのか、伺います。
黒沼企画担当部長 東京都水道局環境計画では、環境基本方針の1つに地球温暖化防止のさらなる推進を掲げ、平成22年度から3カ年で取り組む具体的な事項と目標を定めております。この計画に基づきまして、エネルギーの効率的な利用や再生可能エネルギーの有効活用、お話にございました水道水源林の保全管理、さらには水資源の有効利用としての漏水防止対策の推進などに着実に取り組みまして、引き続き環境負荷の低減と二酸化炭素の削減を図ってまいります。
山下 わかりました。ただいまのご答弁の中に、環境負荷の低減やCO2削減につながるものとして、漏水防止対策がありました。
漏水防止と言えば、水道局が鉛製の給水管からステンレス管へ取り替えるなどの取り組みを積極的に実施してきた結果、漏水率が2.7%まで低下した、と認識しております。
そこで、漏水率の低減による水資源の有効利用やCO2削減への貢献について伺います。
今井茂樹・給水部長 公道下の給水管をステンレス鋼管に取り替え始めた昭和55年度の漏水率は15.4%でございました。しかし、現在では世界において最も低い水準である2.7%まで減少しております。昭和55年度と現在の漏水率を比較いたしますと、12.7%低減しております。
漏水削減量は2億3,600万立方メートルで、この量は東京ドームの約200個分となります。これをCO2削減量に換算いたしますと47,700トンとなり、また、自動車のCO2排出量に換算いたしますと、約44,000台分に相当いたします。
山下 環境負荷低減のために、漏水防止対策がいかに重要であるかがわかりました。
漏水を防止するためには、予防することとともに、漏水が起こった場合のできるだけ早い時期での発見が必要であると考えます。それは地下の普段目に見えないところのものだけに、まさにプロフェッショナルの領域ではないかと思います。
漏水の予防と発見の、それぞれの技術について伺います。
今井部長 漏水予防の技術といたしましては、漏水発生の大部分を占める鉛製給水管を更新するために、材質強度に富むステンレス鋼管の配管システムを開発いたしました。さらに、道路荷重や振動を吸収できる波状管への改良などを積み重ね、漏水しにくい管路への更新を実施いたしております。
漏水発見の技術につきましては、相関式漏水発見装置などの機器の開発と改良をおこなう。それとともに職員の技術力向上のために、経常的に研修や訓練を実施してまいりました。
また、技術の確実な継承を目指して、ベテラン職員が後輩職員に対して、指導や助言をおこなう東京水道エキスパート制度を導入して活用しております。
山下 東京都水道局のすぐれた技術に支えられての、世界に誇れる低い水準の漏水率であることがわかりました。「匠の技」とも言える水道技術の継承、人材の育成に力を入れ、これからも環境負荷低減を図りつつ、本来の事業である安全でおいしい水道水の供給に努めていただきますようお願いして、質問を終わります。