2011年11月28日(月) 公営企業委員会 事務事業質疑
下水道局に対する質疑

山下ようこ それでは、私からは、下水道局の事業について、テーマを環境に絞って質問させていただきます。
20世紀は科学技術の進歩が大きな経済発展をもたらしましたが、その一方で、地球温暖化などの環境問題が地球規模で顕在化した時代でもありました。
時代は変わって、今や、温室効果ガスの削減は、人類の存亡にかかわる重要な問題となり、人々は、この21世紀を「環境の世紀」と呼んで、地球上に暮らす一人ひとりの人間が、危機感を持って、共にこの問題に取り組むべきとしています。
日本の首都、東京は、政治経済の中枢機能が集積し、まさに世界を代表する都市と言えますが、都市としてのさまざまな経済活動などを通して、多くの温室効果ガスを排出しています。そして、下水道局は、都庁の事務事業活動で排出される温室効果ガスの4割を占めるなど、温室効果ガスの排出量削減に大きな責任を持っていると言えます。下水道局が、「アースプラン2010」を策定し、地球温暖化防止対策の道筋を示しているのも、こうしたことを踏まえてのことと理解しております。そこで、下水道事業における温室効果ガス削減の取り組みについて伺います。

黒住光浩・計画調整部長 アースプラン2010は、下水道事業から発生する温室効果ガスを2020年度までに2000年度比で25%削減することを目的に、昨年2月に策定したものでございます。
下水道事業から発生する温室効果ガスにつきましては、汚泥焼却に伴い発生する二酸化炭素の310倍の温室効果を持つ一酸化二窒素などが23%を占めておりますことから、汚泥を高温で焼却し一酸化二窒素を削減するとともに、高温焼却に伴い従来は増加しておりました補助燃料などもあわせ削減できる多層型流動焼却炉やターボ型流動焼却炉の技術を開発し、導入を進めております。
また、汚泥を乾燥した後、蒸し焼きにして炭化物を生成する汚泥炭化炉や、低酸素状態で汚泥を熱分解し燃料ガスを生成するガス化炉の導入も進めております。
さらに、水再生センターにおきましては、下水を処理する過程で使用する電力の削減にも取り組んでおります。具体的には、送風機の効率的な運転や省エネ型の散気装置や攪拌機の導入などを図っております。
このほか、再生可能エネルギーなどの活用を図るため、水再生センター内の放流落差を利用した水力発電や下水道施設の上部空間を活用した太陽光発電設備の導入などをおこなっております。

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山下 下水道局が「アースプラン2010」に基づき進めている施策がわかりました。では、温室効果ガスの実際の削減状況はどのようになっているのでしょうか、伺います。

黒住部長 アースプラン2010では、温室効果ガスを2020年度までに2000年度比で25%削減することを目標にし、この長期的な計画を着実に実施するため、中間的な目標として、2014年度に18%を削減する目標を設定しております。
省エネ型設備の導入などに加えまして、汚泥焼却にかかわる運転管理の工夫などによりまして、昨年度の温室効果ガスの排出量は2000年度比で約20%を削減しており、既に2014年度の中間的な目標値でございます18%を達成しております。
しかしながら、今後、高度処理の導入や合流式下水道の改善などの事業の推進に伴い、温室効果ガスの増加が見込まれるため、今後とも着実に対策を進め、2020年度の目標でございます2000年度比25%の削減に努めてまいります。

山下 いくつもの技術を導入し、着実に温室効果ガスを削減していることがわかりました。
私は、先の決算特別委員会で、下水道局のすぐれた技術について確認させていただきました。下水道局で開発した技術は数多く、特許などを取得したものは200件を超え、この数は、都庁内でも群を抜いているとのことでした。
こうしたすぐれた技術が、温室効果ガス削減に向けた「アースプラン2010」の取り組みを支えていると言えるでしょう。
ただ今のご答弁にありましたように、今後、下水道事業を推進するにあたっては、温室効果ガスの増加も見込まれる、ということですから、こうした課題に対応するためには、なお新たな技術を開発し、活用することが重要と考えます。
そこで、温室効果ガスの削減に向けた技術開発の取り組みについて伺います。

中里隆・技術開発担当部長 下水道局では、現在、汚泥処理や水処理の工程で発生する温室効果ガスの削減技術の開発に取り組んでおります。
汚泥処理工程においては、外部からの補助燃料や電力を必要としないことから、温室効果ガスの発生量が少なくなる自立型の焼却システムを開発するため、民間企業との共同研究の実施に向けた準備をおこなっているところでございます。
次に、水処理工程においては、水処理工程で発生する温室効果ガスのうちN2O、一酸化二窒素について、大学や民間企業などとの共同研究により、不明であったメカニズムを解明するとともに、連続的に測定できる機器を日本で初めて開発いたしました。
今後、これら測定技術などを活用し、水処理工程におけるN2Oの発生を抑制できる技術を開発し、実際の水処理施設への導入に向けて取り組んでまいります。

山下 ぜひ、下水道局が都の技術をリードして、温室効果ガスのより一層の削減に努めていただきたいものと思います。
ところで、新たな技術の開発は、大気中における温室効果ガスの削減だけでなく、河川など、公共用水域の水質改善にも寄与するものと言えます。
たとえば、魚のアユは、水のきれいなところに生息するので、アユの遡上は、川の水質改善のバロメーターでもあります。そのアユの遡上が、今年、多摩川で、過去最多の220万尾であったという報道があり、大変、喜ばしいことと思っております。
島しょ部を除き、東西に長い東京都の西のはしから、東の東京湾へと流れる多摩川は、かけがえのない豊かな自然に包まれた上流部から、市街地が広がる中にも、武蔵野の自然が残り、岸辺には野生の植物や野鳥なども数多くみられる中流部を通り、やがて近代化が著しい東京の空の玄関口、羽田空港のある河口部へと至る、東京を象徴する河川です。地域ごとに変化する表情や四季折々のたたずまいは、都民の心に潤いを与えてくれて、まさに多摩川は、私たち都民が守るべき大切な財産と言えるでしょう。
多摩川の流域には、言うまでもなく、多くの人々が暮らしていますので、一般には生活排水などが川を汚す原因になるにもかかわらず、毎年、アユの遡上が確認され、それが風物詩と言われるまでになっているのは、河川の水質が改善していることを証明するものであり、それはすなわち、下水道の普及のおかげであると考えます。
そこで、下水道の普及と、多摩川の水質改善の関係について伺います。

堀内清治・流域下水道本部技術部長 多摩流域では、昭和40年代前半から、都と市町村が連携して下水道の普及に取り組んだ結果、昨年度末の下水道普及率は99%に達しております。
多摩川中流部の河川水質については、都市化の進展とともに人口が急増した昭和55年には、下水道の普及率が46%であり、河川水質の指標である生物化学的酸素要求量が1リットル当たり12ミリグラムでありました。これは、比較的汚れに強いとされるコイやフナでさえも生息することが困難な状況でございました。
下水道普及率が995となった昨年度には、生物化学的酸素要求量が1リットル当たり1.4ミリグラムと、約30年前と比べ、大幅に水質が改善され、これは、たとえますと、ヤマメやイワナなどの清流の魚も生息できる水質となっております。

山下 多摩川の水質が大きく改善したことがわかりました。
今後、さらに良好な水環境を形成していくためには、富栄養化の一因である窒素やリンを削減していくことも重要であると考えます。
先の事務事業説明では、流域下水道の水再生センターで、下水処理水の窒素やリンを削減する高度処理の導入を進めているとお聞きしました。そこで、流域下水道における高度処理について、これまでの導入状況を伺います。

堀内部長 現在、多摩川の河川水量は下水処理水が半分を占めておりまして、下水処理水の水質を向上させることは水環境の改善に大きな効果がございます。
流域下水道では、水環境のさらなる向上を目指し、平成12年度の北多摩二号水再生センターを皮切りに、各水再生センターにおきまして、多摩川などの水質改善と東京湾の富栄養化防止を図るため、窒素、燐をより多く除去する高度処理の導入を順次進めております。
その結果、平成16年度には、流域下水道のすべての水再生センターで高度処理が可能となりました。
これまでに、1日当たり約47万立方メートルの施設が稼働し、流入下水量に対する高度処理の割合は約5割以上となっております。


山下 これからも、高度処理の導入を進めて、その割合をさらに高めていただきたいと思います。そこで、高度処理への今後の取り組みについて伺います。

堀内部長 流域下水道では、さらなる水環境の向上を図るため、高度処理の割合を高めることとしております。高度処理の導入に当たっては、計画的に施設を増設するとともに、老朽化設備の更新時期に合わせた転換を進めてまいります。
平成27年度までに、1日当たり下水流入量の6割に相当する63万立方メートルの施設を稼働させることを目標として、鋭意整備を進めております。
今後とも、高度処理を積極的に推進し、多摩地域の水環境の向上に貢献してまいります。


山下 環境のさらなる改善のために、今後も積極的な取り組みをお願いいたします。実は、私の母校、立川市立立川第一中学校の校歌の中には「流れも清き多摩川の水を鏡に朝夕(あさ・よい)に」という歌詞がございます。多摩川を表す修飾語は、やはり、いつの時代も「流れも清き」で、あってほしい、そう思います。
下水道局の取り組みによって、多摩川の水質が全域で改善し、多摩川が日本を代表する清流、美しい川になりますことを切に願って、私の質問を終わらせていただきます。