山下ようこ それでは私からは、東京都が進めている3つの市街地再開発事業、具体的には北新宿地区、環状第二号線新橋・虎ノ門地区、それに大橋地区について伺います。
今年3月11日の東日本大震災の甚大な被害は、日本人に防災対策のさらなる強化の必要性を訴えるものとなりました。
東京都の市街地再開発事業のうち、特に防災の面から注目すべき、と考えられるのは北新宿地区です。かつては木造住宅が密集し、火災に脆弱な地域だったと認識しております。地震に伴い、大規模な火災が一気に発生した場合を危惧する声も多く聞かれました。
しかし、現在では、再開発事業が進み、新しい街に生まれ変わりつつあります。
そこで、まず、この北新宿地区の平成22年度決算における事業費ベースの進捗率と、防災面での取り組みについて伺います。
遠藤正宏 都市整備局市街地整備部長 北新宿地区市街地再開発事業の平成22年度決算におきます事業費ベースの進捗率は96%でございます。
この北新宿地区の事業は、都市計画道路放射第六号線と青梅街道の交差部に位置する約4.7ヘクタールの区域でおこなっております都市計画事業でございます。平成10年度から事業に着手してございます。
北新宿地区は、新宿副都心の一角に位置しながら、お話がございましたように狭わいな道路が多く、また細分化された宅地に木造住宅が密集するなど、防災上、危険な地域でございました。
この事業では、防災面の取り組みといたしまして、放射第六号線を整備して延焼遮断帯を形成するとともに、生活道路を整備して緊急車両のアクセスの向上を図っております。また、再開発ビルを建設しまして、従前8割を占めていた木造住宅をすべて建物不燃化を図ることとしております。
これらに加えまして、約5,000平方メートルの空地には、災害時にトイレとして利用できるマンホールや、かまどとして使えるベンチを整備しておりまして、周辺からも逃げ込むことのできる震災に強いまちづくりを進めているところでございます。
.山下 続いて「人と車との共存」という観点から、環二地区と大橋地区について伺います。
環二地区では環二本線、大橋地区では大橋ジャンクションという、幹線道路の整備と街づくりを一体的に実施している事業と承知しております。このうち大橋ジャンクションは既に昨年3月、供用を開始しましたので、きょうは22年度決算ということで、環二地区の平成22年度決算における事業費ベースの進捗率と道路整備の進捗状況について伺います。
遠藤部長 環状第二号線新橋・虎ノ門地区市街地再開発事業の平成22年度決算におきます事業費ベースの進捗率は73%でございます。
この再開発事業により整備します新橋・虎ノ門地区の環状二号線は、広域交通を担う地下トンネルの本線と地域内交通を担う地上部道路の二層構造となってございます。このうち虎ノ門地区につきましては、立体道路制度を活用しまして、地下の道路と再開発ビルが一体となった構造で計画してございます。
お尋ねの道路整備の進捗状況でございますけれども、地下トンネルの本線につきましては、建設局施行の街路事業でございまして、平成19年度から工事に着手してございます。
なお、再開発ビルと一体的に施工する虎ノ門地区の分につきましては、今年の4月に着手してございます。
他方、地上部道路につきましては、再開発事業として都市整備局が整備をおこなうものでございまして、今年度から順次、工事に着手してまいります。
山下 東京都が進めているこの3地区の再開発事業のすぐれている点は、もともとの住民が、その地域にそのまま住み続けられるということだと思います。
また、もともとの住民だけでなく、マンションなどには新たな人々も入居し、活気ある新しい街の誕生にもつながります。
そこで、東京都では、「人々の暮らし」という観点から、従来の住民や新たにその地区に入居される人々に対して、どのように配慮しながら、街づくりを進めているのか、伺います。
遠藤部長 再開発事業におきまして、地区内で生活再建を希望される権利者の方には、地区内に建設いたします再開発ビルに権利が返還されることになります。このことによりまして、従前の権利を持たれている方は再開発ビルに入居するということが可能となるわけでございます。
また、地区外に転出を希望される方に対しましては、施行者であります東京都が代替地とか、あるいは移転先の物件のあっせんなどをおこなっておりまして、個々の方々の事情に応じましてきめ細かく対応し、地区外での生活再建が図れるよう努めてきたところでございます。
とりわけ都施行の再開発事業は、再開発事業によりまして道路整備するということが重要でございます。道路整備によりまして、広域交通ネットワークの形成、あるいは地域の利便性の向上が図られるということになるわけでございます。また、再開発ビルの建設や公園や緑地の整備によりまして、住環境の改善、あるいは防災性の向上が図られることになるわけでございます。
このように再開発事業は、ただいまお話がございましたような人々の暮らしへの配慮、これに十分に配慮したまちづくりを進めてきたところでございます。
山下 よくわかりました。
人にも環境にも配慮した街づくりを進める上では、植物を植える、すなわち緑化も非常に重要な要素です。新宿駅の西口地下広場には、「大橋グリーンジャンクション進行中」という大きな広告ビジョンが掲示されていて、人目を引きます。
そこで、3つの地区の再開発事業での緑の整備内容と今後の予定を伺います。
遠藤部長 都施行の再開発事業では、計画段階から環境に優しいまちづくりに向けまして、さまざまな創意工夫を行いまして、緑地の確保に努めてまいりました。
北新宿地区につきましては、街区全体で約8,400平方メートルの緑地を確保する計画でございまして、これは地区全体の敷地面積の約3割を占めてございます。
次に、大橋地区でございますけれども、この地区では地元目黒区が首都高速大橋ジャンクションの屋上を利用した公園整備を実施しておりまして、平成24年度に完成する予定でございます。また、首都高速道路の換気所の屋上には、田植えもできる自然再生型の緑地空間が首都高速道路会社によりまして整備されてございます。これらを合わせまして、大橋地区全体で約13,600平方メートルの緑地が確保されることになってございます。
さらに、環状第二号線新橋・虎ノ門地区でございますけれども、この地区では3つの街区に合わせて6,500平方メートルの緑地を確保する計画でございます。加えまして、環状第二号線の地上部道路につきましては、広い歩道空間を活用いたしまして、街路樹などによりまして、グリーンロードネットワークにふさわしい、厚みのある緑を整備することとしてございます。こちらのほうの全体の完成は平成26年度までを予定してございます。
山下 3地区ともダイナミックな緑化推進の状況がよくわかります。
かつては、開発イコール緑の減少と思われましたが、時代は移り、緑を守る開発に。さらに21世紀の現在は、もはや開発は緑を増やすものであると私は考えます。
都民の中には、いまだに「開発は緑を減少させる」と思っている人もいるようですが、「理念のある高尚な開発は、緑化をダイナミックに躍進させるものである」と、私は声を大にして言いたい、と思っております。
そして、そのような観点から、東京都の再開発事業は、21世紀型の街づくりの模範であると考えます。これからも首都東京、そして世界の大都市・東京にふさわしい都市整備を遂行することを要望して、質問を終わらせていただきます。