山下ようこ委員 今回の地震による発電所の被災に伴い電力危機を迎え、社会全体が省エネ、節電に取り組んでいる現状があります。この電力危機を克服するべく、東京都は電力対策緊急プログラムを策定し、そこには過度の電力依存社会からの脱却を目指すための取り組みが示されています。
私は、これらの省エネ、節電対策の中で、特に明るさという観点から、きょうは質問をさせていただきます。
東京都電力対策緊急プログラムでは、都の施設の省エネ、節電を推進するために、LED照明の導入を進めるとしています。民間のオフィスビル等の照明ではインバーター型蛍光灯がかなり普及しているようですが、一方、LED照明は着実に増加してはいるものの、コスト面などから、これまで急速な普及には至っていないと思われます。
そこで今回、都はオフィスビル等へのLED照明の導入についてどのように進めようと考えているのか、見解を伺います。
山本明・環境都市づくり担当部長 オフィスビルにおけるエネルギー消費のうち、照明が占める割合は約三〇%と大きく、照明の高効率化は大変重要でございます。
近年、LED照明につきましては製品開発が積極的に行われ、効率が向上してきてございます。このため、環境確保条例において、中小規模事業所のCO2削減量を大規模事業所の削減義務に活用できる都内中小クレジットの認定基準を本年三月に改正いたしまして、オフィスビルの一般照明として利用されております高効率な直管型LED照明を対策項目として追加してございます。
この都内中小クレジットの認定基準の改正によりまして、中小規模事業所におけるLED照明の導入を促進していきますとともに、広く、高効率なLED照明の普及を図っていけるものと考えております。加えて、この夏の電力不足に向けて開催しております節電セミナーなどにおきまして、高効率なLED照明への更新を積極的に促しているところでございます。
山下委員 今、太陽光や太陽熱をエネルギーに変換する技術が注目を浴びています。
都も、これらの取り組みに対して補助事業を実施するなど積極的に推進しており、これは評価されるべきことだと思います。
しかしそれに加えて、明るさの観点から、太陽の光そのものをこれまで以上に活用できないものかと考えます。例えば、オフィスビルそのものに太陽の光が差し込むような構造にしたり、あるいは自然の光を鏡のダクトに閉じ込めて運び、オフィス内の照明用光源として使う技術、光ダクトを備えたりすることなどが考えられます。
そこで、都内で太陽の明るさを活用している事例と、その状況について伺います。
和賀井克夫・都市地球環境部長 都では、平成十四年から建築物環境計画書制度を導入しまして、建築主が太陽の光をそのまま執務室に取り入れる工夫や光ダクトを導入した場合に、再生可能エネルギーの直接利用として位置づけまして高く評価し、その内容をホームページで公表しております。
昨年四月からの総量削減義務の導入を契機に、都内では近年、環境配慮型オフィスビル、いわゆるグリーンビルディングの建設が盛んになってきております。
これらのオフィスビルでは、最上階に設けました天窓から低層階の執務室に太陽の光が届くよう光ダクトを導入している事例ですとか、太陽光の強さや向きに応じまして、シェード、いわゆるひさしの傾きを自動で制御したり、太陽の光の入ってくる量に応じて照明を制御したりするなど、太陽の光をより効果的に使うための工夫が凝らされている事例が出てきてございます。
山下委員 実は私は、去年七月に都が開催した環境建築フォーラムに参加いたしました。今、ご答弁いただいたように、確かに都内で幾つかの事例はあるようですが、一年前のその時点では、まだまだ十分とはいい難いと感じました。
今回の電力危機に際し、今後、太陽の光をもっともっと活用して、執務室の明るさを確保するオフィスビルをふやすことが必要だと考えられ、そのためには建築主がその重要性を意識することが求められます。今後の都の基本的考え方を伺います。
和賀井都市地球環境部長 建築物環境計画書制度や総量削減義務の導入を契機としまして、太陽の光を積極的に活用する技術を初めとした、環境配慮に関する民間の技術開発が活発化したものと認識しております。
都では昨年七月に、こうした環境建築技術を取り入れました環境性能にすぐれた建築物を広く紹介するため、オフィスビルを対象として環境建築フォーラムを開催いたしました。この中で、事業者から、太陽の光をそのまま使うための工夫や、光ダクトの整備の取り組み等についてもご報告をいただいたところでございます。
また、昨年一月から建築物環境計画書制度を強化して、一万平方メートルを超えるオフィスビルにつきましては、建築主がテナントに賃貸を行う際、省エネルギー性能評価書を交付することを義務づけました。この省エネルギー性能評価書では、太陽の光を活用する技術を導入したことを示し、テナントにアピールできるようになってございます。またテナントも、環境配慮型のビルを選びやすくなっていると思います。
今後も、これらの取り組みを複合的に進めることで普及啓発を進め、事業者が新築オフィスビルに太陽の光をそのまま使う工夫を導入する後押しをしてまいります。
山下委員 今回の大震災を通じて改めて感じたのは、この電力危機が起こる前から、東京都が省エネを進めるために環境確保条例に基づくさまざまな施策に取り組んできており、だからこそ、こうした困難な場面でも的確に対処することができているということです。
環境局の力と頭脳が世の中の流れをつくったり、仕組みを変えたりすることにもなります。今回の電力危機は、太陽の光の明るさそのものを活用するオフィスビルをふやしていく契機とすべきと考えます。
環境確保条例があり、その中に建築物環境計画書制度があります。これを軸として、オフィスビルで太陽の光の明るさを取り入れることが当たり前となる社会につながっていくことを期待して、質問を終わらせていただきます。
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